2018年9月17日


九電、太陽光停止要請も 供給過多で秋にも 電力需要減、原発は再稼働


九州電力が今秋にも太陽光・風力の発電事業者に稼働停止を求める「出力抑制」を実施する可能性が高まっている。
実施されれば離島以外で全国初。
九州では太陽光発電の普及で供給力が増えているほか、原子力発電所も再稼働した。
冷房の電力需要が落ち込む秋に需給バランスが崩れる可能性があり、九電は大規模な停電を避けるために出力抑制する構えだ。 

九州では太陽光発電の供給力が増えている(熊本県内の太陽光パネル)

太陽光は晴天の昼間に発電量が伸びる一方、夜間は発電しない「不安定電源」とされる。
再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が始まった2012年以降、設置場所を選ばず、保守が簡単なことから急増した。
ゴールデンウイーク中、九電管内で総電力需要のうち、太陽光の割合が一時、8割を超える日が3日もあった。 

特に日照条件が良い九州は大規模太陽光発電施設(メガソーラー)の建設が相次いだ。
九電管内の送電網に接続する出力量は計約803万キロワットに上り、全国の約2割が集中する。
電力は需給が同量にならなければ周波数が安定せず、最悪の場合は大規模な停電が起きる。
九電は液化天然ガス(LNG)火力発電所の出力を下げたり、昼間の余った電気を使って水をくみ上げて夜間に発電する揚水式発電所を活用したりして需給を調整している。
だが原発の再稼働や定期検査の終了で、今年9月下旬に4基同時に営業運転する見通し。
さらに太陽光発電の出力量は月平均約5万キロワットのペースで増え続ける。
需給バランスの崩れを防ぐ手段が発電事業者に稼働停止を求める出力抑制だ。国のルールでバイオマス、太陽光・風力の順番で実施する手順になっている。
離島では電力の融通が難しく、すでに出力抑制が行われている。
いずれも九電管内で2015年の種子島(鹿児島県)をはじめとして、壱岐島(長崎県)と徳之島(鹿児島県)でも実施されている。
九電は離島以外でも2015年1月以降、送電網への接続を認めた太陽光発電事業者に対し、需給バランスが崩れた際に無制限・無補償で出力抑制できる契約を結んでいる。
九電の池辺和弘社長は「需要の低い日は出力制御することによって全体で多くの太陽光発電を導入できる」と理解を求める。
ただ太陽光発電事業者にとっては発電した電気を売れず、収益を圧迫する原因になる。
事業者からは「原発を動かさなければよいのでは」との声がある一方、「太陽光のさらなる普及のためには多少の犠牲はやむを得ない」との声が出る。
昼間しか発電できない太陽光発電、一度動かせば発電量をすぐには変えにくい原発――。
両方の特性を生かして電気を効率的に使うために蓄電池の開発が進むものの、まだ価格が高くて採算が合わない状況だ。
また運用容量の拡大を進めるものの、九電と中国電力が電力を融通する際に使う電線「連系線」も不十分だ。
原発や火力発電で電力を安定供給しながら、天候などで発電量が変動する再エネをどうやって増やすのか。
政府が打ち出す再エネの「主力電源化」に向けて、事業者や国は知恵をしぼることになりそうだ。

 

 

出典:2018年9月1日 日本経済新聞 朝刊