2016年8月1日


九電、「優先給電ルール」を発電事業者に周知、他社電源への出力抑制に布石 by 7/27 日経テクノロジー online


九州電力は7月21日、太陽光発電設備などに対して、出力抑制を実施する準備として、「優先給電ルール」と出力制御の手順などについて確認するリリースを発表した。今後、各発電事業者にも個別にダイレクトメールで案内を送る方針だ。

 

 「優先給電ルール」とは、太陽光や風力の急増で、電力の供給力が需要を上回る場合の対応として、発電所の種別ごとに出力を抑制する順番を定めたもので、今年4月に電力広域的運営推進機関で整備された。

 

出力を抑制する順番は、九電の火力電源を停止もしくは抑制した後、(1)九電以外の火力電源、(2)連系線を活用した九州地区外への電力供給、(3)バイオマス専焼発電、(4)地域資源バイオマス発電、(5)自然変動電源(太陽光・風力)、(6)電力広域的運営推進機関による措置、(7)長期固定電源(原子力・水力・地熱)――となる。

 

九電は、今年5月4日の需給バランスを公開しており、それによると、13時には太陽光・風力の出力は490万kWと需要の66%に達した。九電は自社火力電源を抑制しつつ、揚水発電の動力運転(汲み上げ)によって、需給バランスを維持した。公表されたグラフから判断すると、九電の持つ揚水動力(約219万kW)は、ほぼフルに活用したと見られ、自社施設での対応が限界に近付きつつあることが伺える。

 

今回、優先給電ルールを改めて告知したのは、今後、自社以外の火力電源、バイオマス、太陽光・風力という順番で、出力抑制を要請していく準備と見られる。

 

九州本土では、太陽光発電設備の導入が急速に進んでいる。2016年5月末の系統接続済みの容量は615万kWに達し、2015年5月末の約500万kWから、わずか1年間で約110万kW増加した。九州本土の太陽光発電の接続可能量(30日等出力制御枠)は817万kWなので、このペースで導入が進むと、あと2年でこの水準に達することになる。

 

固定価格買取制度(FIT)は、電力会社に対し無補償で再エネの出力を制御できる時間を再エネ事業者当たり年間30日(または360時間)までと決めている。「接続可能量」は、その出力制御量をフルに使った場合に、需給バランスを維持できる最大の太陽光導入量として算定したもの。このため、接続可能量に達する前でも、30日(360時間)に満たない範囲で、出力制御が始まる可能性もある。

 

ただ、九電の「817万kW」という接続可能量は、ベース電源となる原子力の供給力を393.3万kW(5基・設備利用率83.7%)として算定した。現在、稼働しているのは178万kW(川内原発2基)だけなので、その分、火力電源を抑制して太陽光を受け入れやすくなる。

 

一方で、九電が公表した今年5月4日の昼間最小需要は、約740万kWと見られ、これは、九電が想定している大型連休中の昼間最小需要(800万kW弱)を大幅に割り込んでいる。省エネの進展や人口減少などで、需要想定が予想より小さくなる傾向は、離島でも目立っており、接続可能量を算定した当時の条件よりも、出力抑制の必要性が高まっている面もある。

 

※ 九州電力のニュースリリース全文はこちらから

 

 

出典: 7/27 日経テクノロジー online